IOC・国際スポーツ栄養学会が認めた “Aランク”サプリは5つだけ。論文5本で証明された:カフェイン、クレアチン、硝酸塩(ビート)、重炭酸、β-アラニン。市民ランナーが買うべきはこれだけ。
薬局・ネット・SNSには山ほどサプリが並んでいる。プロテイン、BCAA、グルタミン、HMB、テストブースター、ZMA、ビタミンC、コラーゲン……。
でも国際オリンピック委員会(IOC)が “科学的に効くと証明された” と認めたのは、たった5つだけ。マラソンランナーにとって本当に投資する価値があるのはどれか。論文5本で読み解く。
- P1Maughan et al. (2018) IOC — IOC公式声明:Aランク5つ
- P2Peeling et al. (2018) — 用量別推奨ガイド
- P3Spriet (2014) — カフェイン低用量で +1.7〜2.4%
- P4Domínguez et al. (2017) — 硝酸塩でTTE +25.3秒
- P5Hobson et al. (2012) — β-アラニンで +2.85%
はじめに:サプリ選びの落とし穴
市民ランナーが薬局でサプリ棚を見ると、プロテインからアミノ酸まで何十種類も並んでいる。SNSではインフルエンサーが新商品を絶賛し、「これで速くなった」「疲労が消えた」といった声で溢れている。
でも、IOCが “効くと証明された” と認めたのは 5つだけ。それ以外の大半は、エビデンスが弱いか、もしくは マーケティングが先行しているだけ。本当に投資する価値があるのはどれか、論文を順に見ていこう。
P1. IOC公式:Aランク5サプリの定義
IOC consensus statement: dietary supplements and the high-performance athlete.
British Journal of Sports Medicine, 52(7), 439–455.
① カフェイン:持久・スプリント全般
② クレアチン:反復スプリント・レジ系
③ 硝酸塩(ビートルート):持久系
④ 重炭酸ナトリウム:1〜10分高強度
⑤ β-アラニン:1〜4分高強度
IOC Aランク5つのうち、マラソンに最重要なのはカフェイン・硝酸塩・クレアチン。重炭酸とβ-アラニンは中距離向け
マラソン視点で重要度ランキング:
① カフェイン:マラソン全域で確実に効く
② 硝酸塩:エコノミー改善で市民ランナーに特に有効
③ クレアチン:筋トレと組み合わせで間接的に効く
④ β-アラニン:1〜4分の高強度向け、マラソンには弱い
⑤ 重炭酸:中距離向け、マラソンには優先度低
著者(マラソン狙い)なら、①②③に集中するのが投資効率最強。
P2. 用量別推奨ガイド
Evidence-based supplements for the enhancement of athletic performance.
International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 28(2), 178–187.
① カフェイン:3〜6 mg/kg、運動60分前
② クレアチン:ローディング20g/日×5日 or 3〜5g/日×4週
③ 硝酸塩:6〜12.8 mmol(400〜800mg)、2〜3時間前
④ 重炭酸:0.2〜0.4 g/kg、60〜90分前
⑤ β-アラニン:65 mg/kg/日 × 10〜12週
特にタイミングが重要:
① カフェイン:60分前(吸収ピークに合わせる)
② 硝酸塩:2〜3時間前(NO変換に時間)
③ クレアチン:タイミング不問(継続摂取)
④ 重炭酸:60〜90分前(GI不快を避ける)
⑤ β-アラニン:タイミング不問(蓄積効果)
“レース直前に大量に飲む”ではなく、計画的に摂取する。
– 60kg → 180mg
– 70kg → 210mg
– 80kg → 240mg
コーヒー1杯 ≈ 80〜120mg、缶コーヒー ≈ 100mg、カフェイン錠剤 ≈ 100〜200mg/錠。組み合わせて目標値を達成する。
P3. カフェイン低用量で +1.7〜2.4%
Exercise and sport performance with low doses of caffeine.
Sports Medicine, 44(Suppl 2), S175–S184.
低用量の利点:
・副作用ほぼなし
・カフェイン耐性つきにくい
・GI不快感なし
・睡眠への影響少
– 1.7%短縮 = 1:30:00 → 1:28:30(-1分30秒)
– 2.4%短縮 = 1:30:00 → 1:27:50(-2分10秒)
カフェインの作用機序:
① アデノシン受容体ブロック:疲労感の “感受性” を下げる
② 中枢神経刺激:覚醒・集中力↑
③ 脂質動員促進:糖質温存(諸説あり、現代では弱め)
④ 筋カルシウム放出促進:筋出力↑
低用量(3 mg/kg)で十分これらの効果が出る。”高用量だから効く” は古い考え方。
レース当日のタイミング:
– 90分前:コーヒー2杯
– 60分前:カフェイン錠剤100mg(吸収ピークがレース開始時)
– レース中:カフェイン入りジェル(後半用)
注意:普段からカフェインを大量に飲む人は耐性がついて効きにくい。レース1週間前から普段のコーヒー量を半減させると、当日の効果UP。
P4. 硝酸塩でTTE +25.3秒
Effects of beetroot juice supplementation on cardiorespiratory endurance in athletes: a systematic review.
Nutrients, 9(1), 43.
① TTE +25.3秒(95%CI 8.3-42.4)
② RE +1〜3%改善
③ 市民ランナーで効果大、エリートでは効果やや小
④ 用量依存:6.4 mmol以上で効果出る
NOの作用:
① 血管拡張:酸素・栄養素の運搬↑
② ミトコンドリア効率↑:同じ酸素でより多くのエネルギー
③ 筋収縮効率↑:カルシウム放出制御
“市民ランナーで効果大、エリートで効果小”の理由:
– エリートは既に血管・ミトコンドリアが最適化されているので、追加効果が少ない
– 市民ランナーは伸び代が大きい
著者(VO₂max 55、ハーフ1:47)は伸び代の大きい層=硝酸塩がよく効くゾーン。
① 濃縮ビートルートジュース 70ml(レース2〜3時間前)
→ Beet It Sport、SiS Beet などが有名
→ 1本に約400mgの硝酸塩
② 一般ビートルートジュース 250〜500ml(やや効果薄)
③ 緑黄色野菜の食事:ほうれん草、ルッコラ、レタス、セロリ
→ レース前夜の食事に多めに
注意:尿が赤くなる(=ビート色素のベタイン、無害)。便も赤くなることあり。
P5. β-アラニンで +2.85%
Effects of β-alanine supplementation on exercise performance: a meta-analysis.
Amino Acids, 43(1), 25–37.
・1〜4分高強度:平均+2.85%
・<10秒スプリント:効果なし
・>25分持久(マラソン含む):効果限定
・10〜12週の継続が必要
作用機序:筋肉中のカルノシンを増やし、運動中のH⁺(水素イオン)を緩衝。これが効くのは “乳酸が大量に蓄積する1〜4分の高強度”。
効くのは:
– 800m走(ハーフラップ程度の中距離)
– 3000m走
– ボート2000m
– 高強度インターバル練習(=練習中の質向上)
マラソン本番では効果限定だが、“インターバル練習の質を上げる”目的で導入する価値はある。10〜12週の継続でマラソンの間接的なベースアップに繋がる可能性。
ただし市民ランナーが買うなら、まず カフェイン+硝酸塩+クレアチン から。β-アラニンは予算余裕がある時の追加。
“インターバル練習の質を高めたい人” だけ購入を検討。月2,000〜3,000円のコスト。
摂取法:
– 4.8 g/日(70kgで65 mg/kg基準)
– 1日1.6 g × 3回に分割(チクチク感を減らす)
– 10〜12週継続で効果実感
副作用:“皮膚チクチク感(paresthesia)” が出るが無害。徐放性錠剤で軽減可能。
5本の論文から見える、サプリの科学的コンセンサス
| サプリ | 効果 | マラソン重要度 | 月コスト |
|---|---|---|---|
| カフェイン | TT +1.7〜2.4% | ★★★ | 500円 |
| 硝酸塩(ビート) | TTE +25秒、RE +1〜3% | ★★★ | 3,000円 |
| クレアチン | 筋トレ強化、間接的にRE | ★★ | 1,500円 |
| 重炭酸ナトリウム | +2%(1〜10分種目) | ★ | 500円 |
| β-アラニン | +2.85%(1〜4分種目) | ★ | 2,500円 |
じゃあ、サブ90狙いランナーのサプリ戦略は
サブ90狙いランナー(70kg)のサプリ戦略:
▼ レース2日前(金曜)〜前夜(土曜)
– 緑黄色野菜多めの夕食(ほうれん草・ルッコラ・セロリ)
– 食事から硝酸塩を仕込む
▼ レース1日前(土曜)夕方
– 濃縮ビートルートジュース 70ml(就寝前)
– 緑黄色野菜の夕食を継続
▼ レース当日朝(レース時刻 9:00 想定)
5:30: 起床、水500ml
6:00: 朝食(白米+鮭+納豆)+ ビートジュース30ml
7:30: 濃縮ビートジュース70ml(レース90分前)
8:00: コーヒー2杯(200mg)+ カフェイン錠100mg = カフェイン300mg(=4.3 mg/kg)
8:30: アップ開始、軽くジョグ
8:45: ジェル1個(マルトラCHO)
9:00: スタート
9:30: カフェイン入りジェル(レース後半用、50mg追加)
▼ 練習期(平日のクレアチン)
– クレアチンモノハイドレート 5g/日
– 起床直後 or トレーニング後
– 4週で効果実感、長期継続OK
– 体重1〜2 kg増は水分(筋細胞内)
優先度ランキング(予算別):
▼ 月1,000円
カフェイン錠剤 only
レース当日のみ使用
▼ 月3,500円(コスパ最強)
カフェイン錠 + ビートジュース(レース月のみ)
これだけで Aランクの主要効果を得られる
▼ 月5,000円
上記 + クレアチン 5g/日(継続)
筋トレ効果も底上げ
▼ 月10,000円(完全装備)
上記 + ホエイプロテイン + β-アラニン + 重炭酸
ただし投資効率は逓減
3つの心構え:
① “高いサプリ” より “正しい用量”:¥10,000のマルチビタミンより¥500のカフェイン錠が遥かに効く
② レース1ヶ月前に必ず練習で試す:本番初体験はGI不快リスク。20km走でカフェイン+ビートを試す
③ “なんとなく飲む” は無駄:用量・タイミングを守らないと効果半減
私(著者)も以前は色んなサプリを試したが、今はカフェイン+ビート+クレアチンの3点セットに絞って投資している。月コスト5,000円程度でAランク主要サプリの恩恵をすべて得られる。
“プロが使ってる”宣伝より、論文で裏付けられたものを選ぶ——これが市民ランナーの賢い選択。
※ 本記事は学術論文の内容を市民ランナー向けに要約・翻訳したものです。より正確な情報は各論文原著を参照してください。
※ Maughan IOC声明・Burke LM・Peeling P らはGSSI/PepsiCo・Sports Nutrition Industry関係者を含みます。利益相反は声明中に明示されています。
※ カフェイン感受性・心疾患・妊娠中の方は、サプリ使用前に必ず医療機関に相談してください。
※ 競技レベル(JADA/WADA対象)では、第三者認証(Informed Sport等)を受けたサプリを選ぶことを推奨します。
※ 高血圧・腎臓病など特定疾患のある方の硝酸塩・重炭酸摂取は、必ず主治医に相談してください。


コメント